酒場のオヤジ流・自棄酒考

酒好きが高じて酒場のオヤジになって、早いもので16年目である。

店が年を重ねれば、当然のように、あちこちで不具合が出はじめ買い替えをしなくてはならなくなる。人も同じでガタがくるのは仕方ないが、替えが利かない分、手入れしながら騙し騙し行くしかない。

それでも、人のいいところは、重ねた歳のぶんだけ角が取れて丸くなってくるところだろう。中には尖んがっていらっしゃる方もお見受けするが、それはその方の生き方なのだから、私がとやかく言うものでもない。

丸くなられた方からお話を伺うと、丸くなると楽になる部分が増えてくる一方で、同じように、しゃくの種も増えるとおっしゃる。

まさしくその通りである。そして酒場のオヤジとしては、それを抑えるのには、やはり【自棄酒】が好都合なのだ。

例えば、こんな夜など。。。

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「スコッチは何がある?」
  
  【来た来た来たぁ~この年代の方はスコッチ信者が多いし、でも。。。】

「申し訳ありません、うちはバーボンが多いので、スコッチはメニューにあるものぐらいしか置いてありません」

「バーボンかぁ~俺はウイスキーしか飲まないんだよなぁ~」
  
  【だよな、きっとそう来ると思ってた。バーボンはウイスキーだよ】

「よろしければ、こちらがバーボンのリストですので、こちらからお選びください」

「んん~~じゃ、これをくれ」
  
  【んん~~指さされても、ちょっと見えにくいんだけど。。。はいジム・ビームね】

「飲み方はどうされますか?」

「(どや顔)ハーフロック!」
  
  【えっ?何故にどや顔?】

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その後は、予想通りの的外れなスコッチ講釈に、適当な相槌を打ちながら付き合い、ひたすら閉店時刻を待つこと数時間。

結局、店には3本しか無い¥500のバーボンを1杯ずつチョイスされ、どや顔ハーフロックで召し上がって、気分よさそうに帰っていかれた。

こんな夜ぐらいは【自棄酒】も許してもらえるだろう。でも、それが、やけに旨かったりするから始末が悪いのである。