ネグローニ

2018/04/11my Style,Note


味覚とは面白いものだ。

幼いときに、悪戯(いたずら)に舐めたビールの泡の苦さ。幼心では到底理解できなかったその味が、やがて、恋しくて仕方なくなる年頃がやってくる。イカの塩辛を頬張る大人を前にして、気持ち悪いと思っていた自分が、燗酒を片手に、それで舌鼓を打っている。

子供には、その年齢に即した世界があるとすれば、その世界での味覚も存在するのだろう。孫たちが美味しそうに口にしている物を見るにつけ、そう思えてくるのだ。

しかし、年齢とともに変化する味覚には納得できたとしても、この歳になってまで、味の好みが変遷するとはどうしたものだろうか。

それが【ネグローニ】である。

カミーロ・ネグローニ伯爵の食前酒だったなどの講釈は捨て置き、ジン、カンパリ、スイートベルモットを混ぜただけの苦みばしったこのカクテルが、やけに気に入ってしまっているのだ。

40度強から15度弱のアルコールを3種類混ぜ合わせただけなので、結構、強いし苦味もきつい。増してやカンパリが苦手なら、まず手は出さない代物である。

数年前の私なら飲んでいなかっただろう。別にカンパリが苦手だった訳ではなく、当時の私は、カクテルといえば、ウィスキー感のある【ゴッド・ファーザー】か【ラスティ・ネイル】と決めていたからだ。

それが、ジンを飲む機会が増え、ウィスキーとは違った香りのバリエーションの面白さに一喜一憂する延長線上に、忽然と現れたのが【ネグローニ】だった。

ほかのカクテル同様【ネグローニ】にも、いくつかのレシピがある。配分をはじめとして、シェイクしたり、ステアしてからグラスに注いだりとあるが、私はいたって簡単な同量をグラスに注ぐビルドで作るのが好きである。

不思議なことに、注ぐ順番で風味が違って感じられるのだ。いろいろ試した結果、どうやら一番初めに注いだ酒が主導権を握るようである。かと言って、明らかな違いなどではなく、作り手の自己満足の範疇を出ない程度の差異なので、酔ってしまえば同じことだのだ。

それでも『どうでもいいことを肴に酔っ払えるところがプロの酔っ払いの真骨頂』とばかり、今夜も【ネグローニ】で気持ちよくなっている。

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Posted by Haru