Waltz For Debby

2021/06/27my Style

 

酒場のオヤジにも密かな楽しみがある。

暇なときにいらした独り呑みの方に限定されるのだが、その方に似合いそうなテーマ・ソングを好き勝手に決めて、さりげなく流し、独り悦にいることなのだ。

先日もやってしまった。

開店して間もなく、それまで数回お見かけしたチャーミングな女性が、これまで通り独りでご来店。飲み物と一品を頼まれて、これもいつも通り静かに読書をされている。

何を隠そう、これほどまでに印象が残っていたのは、彼女の面影が、私の大好きな一番上の孫に似ているからなのだ。

口開けから数時間は暇な時間帯。これは絶好のチャンスとばかり、あれやこれやと頭の中で曲を探してみる。

思い浮かんだのが【Waltz For Debby】だった。

この曲はビル・エバンスが、幼い姪のデビイに捧げたとして名高い名曲であるし、同名のアルバムはモダン・ジャズの名盤紹介には必ず紹介されている一枚でもある。

早速、レコードに針を落とす。これがCDならばこの曲からはじめられるのだが、レコードではそうはいかない。

一曲目の【My Foolish Heart】が静かにはじまる。

この曲も大好きなので、流れている間に、心を落ち着かせるためにも、お気に入りのラスティネイルなんぞを作ってみる。

このあたりも、酒場のオヤジの特権なのだ。

出来上がった特権に口をつけたあたりで、お目当ての曲がはじまった。

耳は流れる曲に、視線は彼女に(あくまでもさりげなく、失礼にならないように、最新の注意をはらうのは言うまでもない)移しながら、選択の可否を確かめる。

挙句、我ながらピッタリの選曲などと、独り悦に入りながら、常連客で立て込んでくるまでの、ゆったりとした時間を過ごせれば、それはもう酒場のオヤジ冥利に尽きるというものだ。

但し、間違っても『わたしのテーマ・ソングは?』などと訊かれたくはない。これは、酒場のオヤジの秘めたる楽しみでしかないのだから。

それでも、何度か来店いただいた際、いつもと同じ曲が流れはじめ、私がのんびりと一杯やっていたとしたら、それがあなたのテーマ・ソングかも。。。

 

※ これはフィクションでmy Styleのお客様とは関係ありません。たぶん。。。

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Posted by Haru