嬉しいプレゼント


 
開店準備を終えサックスの練習でもしようと思っていたところに相方から連絡があった。

「何してる?」
「ぼーっとしてる」
「準備は?」
「済んだ」
「ちょっと帰ってこない?」
「ほい!」

たわいのないいつもの会話のあと、家に帰ってみると、嬉しそうな相方の顔があった。

「これ、届いた!」

と、手渡されたのがこのボールペンである。

一本ずつ削りだすので日数がかかるため、誕生日には間に合いそうもないと聞いていたのを思い出したが、やはり注文してくれていたのだ。

早速、試し書き。

極太の軸が持ちやすいく、削りたての木の肌触りが心地いい。書き味も滑らかで、ほんのりと木の香りも漂ってくる。筆記具好きの私としては、何とも嬉しい贈り物である。

いつもながらの相方チョイスに感謝しながら、半年先のお返しプレゼントを思案し始めた矢先、すでに前倒しで何かを買ってやったことを思い出した。

かといって、覚えているのは、そのとき嬉しそうにはしゃいだ相方の顔だけで、それ以外の記憶は定かではない。おそらく、相方は覚えているだろうが、それを聞いたところで返ってくる言葉は想像がつく。

「ん?そうだった?」と、とぼけたあと「男はそんな小さなことでガタガタ言わないの!」と、くるに決まっているのだ。

近頃とんと物忘れが多くなった。書き心地のいいボールペンが手に入ったことだし、克明にメモを取らなくてはと思いながらも「何を買ったんだっけ?」と、頭の片隅で自問が続いている。