独白(つぶやき)

お陰さまで、店も11年めに入った。好き勝手にやってきただけに、こんなにも長く続けてこられたことは驚きでしかない。それ以上に、店を支えてくださった方々には感謝に絶えないでいる。

以前、【石の上にも三年】と例えられた方がいらっしゃったが、私には当てはまらないのではと思ってしまった。この言葉の裏には【耐え忍ぶ】ことが必須である。好き勝手にやってきただけの私には、まったく的外れな言葉のように感じられてしまった。それでも、正直、10年やってきても、未だに慣れないことがある。

それは、初めていらっしゃった方がカウンターに座られたときである。これは、結構、緊張する。それが、独り呑みの女性だったりすると、その緊張は瞬時に頂点に達してしまうのだ。こちらか話しかけられないのである。この季節なら『桜が綺麗ですね?』とでも、気軽に声をかけてくださればいいのだが、寡黙に呑んでいらっしゃると、対処に苦慮してしまう。

手馴れたバーテンダーの方なら、そつのない対応ができるのだろうが、いかんせん、呑むのが好きで店を始めた私である、そんな手馴れたことなどできる筈もない。挙句、無駄に洗い物を始めたりする羽目になる。

それにも増して、厄介なのが私の風体である。還暦を過ぎたスキンヘッドの髭ずら、しかもピアスまでぶら下がっているのだ。ソレがいきなり声をかけては不味いだろう。心優しい方からの【キュート】という褒め言葉も、私には、お世辞としか受け取れない。

何を隠そう、私は内気で口下手。つまり【シャイ】なのだ。シャイは英語らしいので【I’m very shy.】と染め抜いたTシャツでも作ろうかと思ってしまう。

昨夜も、カウンターに独りで座られた妙齢のご婦人に声をかけられずじまいだった。心から反省しながら『懲りずに、また覗いてくださるだろうか。。。』などと、思いを馳せる、酒場のオヤジのつぶやきである。


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